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個人事業者の労働安全衛生法、何が変わる? 一人親方の義務と元請がやること|2027年4月までの施行日と現場チェックリスト
公開・内容確認:2026年10月31日 / 運営:AI Mediaz
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この記事の結論
- 2025年5月の労働安全衛生法改正で、一人親方などの個人事業者は「守られる側」であり「義務を負う側」にもなりました。 施行は段階的で、2026年4月1日分はすでに始まっています。
- 2027年1月1日から一人親方の業務上災害の報告、2027年4月1日から一人親方本人の義務(規格外機械の使用禁止・定期自主検査・特別教育の受講)が始まります。
- 施工管理がいま動くなら、作業員名簿に一人親方を含める/特別教育の修了証を確かめる/持込機械の点検記録を見るの3つからです。

個人事業者は労働安全衛生法の対象になる?
なります。これまでの労働安全衛生法(安衛法)は、主に「事業者が雇っている労働者」を守る法律でした。一人親方は雇われていないため、同じ足場で働いていても、法律上の扱いが労働者とは違っていました。
2025年5月14日に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」(令和7年法律第33号)は、労働者と同じ場所で働く個人事業者等を、安衛法の保護の対象であり、義務の主体でもあると位置づけました。厚生労働省は、個人事業者自身のけがを防ぐことに加え、同じ場所で働く労働者の災害を防ぐことも目的に挙げています。
ここでいう「個人事業者等」には、一人親方のほか、労働者を少人数だけ使う会社の代表者や役員で、自分も現場で作業する人も含まれます。人数の線は労災保険の特別加入(中小事業主)と同じ考え方で、建設業を含む「その他の業種」では労働者300人以下が目安です。
改正の前から始まっていたことは?
実は、一人親方を守るルールは省令の改正で先に動いていました。
- 2023年4月:有害な作業を一人親方に請け負わせる事業者に、健康障害を防ぐ措置(安衛法22条関係)を義務付け
- 2025年4月:危険な場所での作業を請け負わせる一人親方や、同じ場所で働く労働者以外の人にも、退避や立入禁止などの措置を義務付け
今回の法改正は、これを法律そのものに広げ、一人親方本人にも義務を課したものです。
一人親方の安衛法、2026年4月から何が始まった?
施行日ごとに整理すると、次のとおりです。
| 施行日 | 主な内容 | 主に関係する人 |
|---|---|---|
| 2025年5月14日(公布日) | 仕事を発注する人は、安全を損なうおそれのある工期・納期・施工方法などの条件を付けないよう配慮する(安衛法3条3項)。一般消費者の発注も含む | 発注者・注文者 |
| 2026年4月1日(施行済み) | 元方事業者の指導・統括管理、注文者・機械や建物の貸与者の措置の対象を「労働者」から「作業従事者」(一人親方を含む)に拡大。一人親方にも事業者の安全措置を守る義務。申告と不利益取扱いの禁止 | 元請・注文者・一人親方 |
| 2027年1月1日 | 個人事業者等の業務上災害(死亡・休業4日以上など)を労働基準監督署へ報告する仕組みが始まる | 元請(特定注文者)・一人親方 |
| 2027年4月1日 | 一人親方本人の義務(規格外機械の使用禁止・定期自主検査・特別教育)。業種を問わず、作業場所を管理する事業者に混在作業の連絡調整を義務付け | 一人親方・作業場所を管理する事業者 |
出典:厚生労働省「改正法の概要」、基発0514第1号、基発0330第1号、基発0624第5号、基発0526第1号
2026年4月1日の分で、施工管理に一番関係するのは統括管理の範囲です。統括安全衛生責任者などを選ぶ基準は、これまでの「労働者の数」ではなく、一人親方を含めた「作業従事者の数」で判断することになりました。一人親方が多い現場では、選任が必要になる線を越えていないか、あらためて数え直してください。
ほかに、次の点も2026年4月から変わっています。
- 一人親方も、事業者が講じた安全措置(手すり・立入禁止など)を守る義務を負います(安衛法26条・27条)。
- 注文者が、法令に違反する作業を指示することは禁止です。請負人側の一人親方が指示どおりに作業した場合も対象です(31条の4)。
- 一人親方も、法令違反を労働基準監督署に申告できます。申告したことを理由に取引をやめるなどの不利益な扱いは禁止です(97条)。
個人事業者の安全衛生の義務は? 2027年4月から本人がやること
2027年4月1日から、労働者と同じ場所で作業する一人親方には、次の義務がかかります。厚生労働省の通達では、42条・45条・59条の義務には罰則があるとされています(努力義務の60条の2は除く)。
| 義務 | 条文 | 一人親方がやること |
|---|---|---|
| 規格・安全装置のない機械の使用禁止 | 安衛法42条3項 | 使う機械が構造規格を満たし、安全装置が付いているか確かめてから使う |
| 定期自主検査 | 安衛法45条2項 | 対象の機械は、事業者と同じように定期に検査し、記録を残す。異常があれば補修する |
| 特別教育の受講 | 安衛法59条4項 | 安衛則36条の危険・有害な業務に就くなら、事前に特別教育を受ける |
| 安全衛生教育(努力義務) | 安衛法60条の2第2項 | すでに危険な業務に就いている人は、教育を受けるよう努める |
| 安全装置の取外しの制限 | 安衛則29条 | 持ち込んだ機械の安全装置は原則外さない。他社の機械は管理者の許可があるときだけ臨時に外せる |
出典:基発0526第1号(令和8年5月26日)
「同じ場所」かどうかは、同じ空間で同時に作業するか、危険が及ぶおそれがあるかで判断されます。一時的に労働者がいないだけでは、対象外にはなりません。逆に、物理的・時間的に完全に分かれていて危険が及ばない作業は対象外ですが、その場合も同じ措置を取ることが勧められています(基発0330第1号)。
特別教育は一人親方も受ける必要がある?
2027年4月1日以降、労働者と同じ現場で安衛則36条の業務に就く一人親方は、受講が義務になります。通達では、免許を持っている、技能講習を修了しているなど、十分な知識と技能がある人は科目の一部を省略できるとされています。過去に会社員として特別教育を受けた人も、省略の対象になり得ます。
どの業務が対象になるか、どの科目を省略できるかは、受講する教習機関や労働基準監督署で確認してください。なお厚生労働省は2026年9月2日に、eラーニングなどで安全衛生教育等を行う場合の留意事項の通達を改正しています。eラーニングで受講できるかどうかも、教習機関に確認してください。
元請がやることは? 施工管理が現場で確認するチェックリスト
元請の施工管理が確認したい項目を、施行日ごとにまとめました。会社の安全衛生規程や、発注者・協力会社との契約で決まっている手順がある場合は、そちらを優先してください。
いますぐ(2026年4月施行分はすでに対象)
- [ ] 作業員名簿・新規入場者の記録に、一人親方や作業する役員も入れている
- [ ] 統括安全衛生責任者などの選任基準を、一人親方を含む「作業従事者数」で数え直した
- [ ] 新規入場者教育・KY活動・安全指示を、一人親方にも同じように行っている
- [ ] 一人親方に、手すり・立入禁止などの措置を守る義務があることを伝えた
- [ ] フォークリフトなどの機械を一人親方に貸す場合、貸与者としての点検・通知をしている
- [ ] 工期や作業方法の指示が、安全を損なう条件になっていない(3条3項・31条の4)
2027年1月1日まで
- [ ] 一人親方がけがで休んだら、元請(報告する側)に知らせてもらう流れを決めた
- [ ] 死亡・休業4日以上の場合に、監督署へ「遅滞なく」報告する担当者を決めた
- [ ] 報告は原則電子申請。当面は書面も可とされているので、社内の提出方法を確認した
2027年4月1日まで
- [ ] 一人親方の特別教育の修了証(または免許・技能講習の修了証)を確認し、写しを保管する手順を決めた
- [ ] 持込機械の持込届で、構造規格の具備と定期自主検査の記録を確認する欄を作った
- [ ] 安全装置を外す作業がある場合の許可の手順を決めた
- [ ] 見積もりや契約で、一人親方の自主検査や教育の費用が確保できるよう配慮した
通達では、作業場所を管理する事業者が教育・技能講習・免許の有無を確認すること、持込機械の検査状況に気を配ることが「望ましい」とされています。注文者には、自主検査や教育の経費が請負人の側で確保されるよう配慮することが望ましいともあります。費用を工期で按分して安全衛生経費に計上する方法も例示されています。
労務費や安全経費を見積もりで削りすぎない考え方は、標準労務費で職人の賃金は上がる?でまとめています。
業務上災害の報告は誰がする?(2027年1月から)
2027年1月1日からの報告の流れは、次のとおりです。
| 立場 | やること | 報告先 |
|---|---|---|
| 一人親方 | 労働者と同じ場所で、業務が原因のけが・病気で休業したら、遅滞なく報告する側(元請など)に知らせる | 元請など |
| 特定注文者(一人親方に仕事を出し、同じ場所で自分も仕事をする元請など。数次の下請では最も後の注文者) | 死亡・休業4日以上を「個人事業者等死傷病報告」で報告 | その場所を所轄する労働基準監督署長 |
| 災害発生場所の管理事業者 | 特定注文者がいない場合に報告 | その場所を所轄する労働基準監督署長 |
| 労働者が少ない中小規模の事業者 | 代表者・役員など本人が作業中に死亡・休業した場合に、その事業者が報告 | 所轄の労働基準監督署長 |
出典:基発0624第5号(令和8年6月24日)
期限は「遅滞なく」で、日数の定めはありません。過労による脳・心臓疾患や精神障害による死亡・休業は義務の対象外で、任意で報告できるとされています。報告主体の報告義務には罰則がないとされていますが、報告を理由に一人親方を不利に扱うことは禁止されています。
安全管理の体制を見て職場を選びたい施工管理の方へ
一人親方を含めた安全管理は、元請の施工管理の仕事を増やします。名簿・修了証・持込機械の確認を、会社が様式やシステムで支えているかどうかで、現場の負担は大きく変わります。
転職先を比べるときは、面接で「一人親方の名簿管理や持込機械の確認は、誰がどの様式で行っていますか」と聞いてみてください。元請・サブコンで安全管理の役割がどう違うかは、ゼネコン・サブコン・ハウスメーカー・発注者側の施工管理の違い、現場の配置ルールは監理技術者・主任技術者の要件と「専任」、働き方の規制は建設業の残業上限は?もあわせて確認してください。
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よくある質問
Q1. 一人親方の安衛法の義務は、いつから始まりますか?
一人親方本人の義務(規格外機械の使用禁止・定期自主検査・特別教育の受講)は2027年4月1日からです。ただし、事業者の安全措置を守る義務などは2026年4月1日からすでに始まっています。
Q2. 自宅の作業場で一人で作業する場合も対象ですか?
2027年4月からの本人の義務は、労働者と同じ場所で作業する場合が対象です。それ以外の場所では適用されませんが、同じ措置を取ることが勧められています。
Q3. 特別教育を会社員時代に受けていれば、受け直しは必要ですか?
通達では、過去に労働者として受けた特別教育は、科目を省略できる対象になり得るとされています。修了証を保管しておき、扱いは教習機関や労働基準監督署に確認してください。
Q4. 元請は一人親方の修了証を必ず確認しなければいけませんか?
通達では、作業場所を管理する事業者が教育や資格の有無を確認することは「望ましい」とされています。確認の方法までは示されていないため、会社の安全衛生規程に合わせて手順を決めてください。
Q5. 一人親方が現場でけがをしたら、誰が報告しますか?
2027年1月1日からは、一人親方に仕事を出し同じ場所で仕事をする元請など(特定注文者)が、労働者と同じ場所での死亡・休業4日以上を労働基準監督署へ報告します。一人親方は、休業したら元請などに知らせる義務があります。
Q6. 自分の現場が対象になるか、どこで確認できますか?
厚生労働省の改正法のページに、施行日ごとの政令・省令・通達がまとまっています。個別の現場で判断に迷うときは、所轄の労働基準監督署や、社会保険労務士などの専門家に相談してください。
参考資料
公開時の確認日:2026年10月31日。資料の公開日・対象時点は各リンク先をご確認ください。
- 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)について」
- 厚生労働省 改正法の概要(PDF)
- 厚生労働省 リーフレット「改正の主なポイント」(PDF)
- 改正法について(令和7年5月14日付け基発0514第1号)施行期日の整理
- 施行令等の改正政令等(個人事業者等関係)について(令和8年3月30日付け基発0330第1号)
- 省令の改正について(個人事業者等の業務上災害の報告関係、令和8年6月24日付け基発0624第5号)
- 関係政令の整理等に関する政令等について(個人事業者等の安全衛生対策関係、令和8年5月26日付け基発0526第1号)
- 厚生労働省「個人事業者等の安全衛生対策について」
- 北海道労働局「法令・制度(安全衛生)」